2010年10月6日水曜日

イカ墨はえらい

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----- MIZUKI Yuu Sound Sketch #76 -----

  「イカ墨はえらい」


 イカ墨のスパゲティ、好きだけど、
 イカ墨ってなんだ?
 イカ墨のリゾットも好きだけど、
 イカ墨ってなにもの?
 イカ墨っていうくらいだから、イカのなかにあるんだろう。
 たしかにイカをさばくと、真っ黒い墨が詰まった袋が出てくる。
 包丁で切ると、ドロッと墨みたいなのが出てくる。
 これを使ってイカ墨のスパゲティを作ってみようと思ったこともあるけれど、
 とてもじゃないが少なすぎて料理には使えない。
 料理に使うなら、
 市販のイカ墨ペーストを使う。
 僕が知ってるのはレトルトパックになっているやつか、缶詰のやつ。
 イカ墨はうまい。
 なんでだろう。
 イカは墨をどうやって作ってるんだろう。
 イカは墨になにを詰めこんでるんだろう。

 タコも墨を吐く。
 敵に襲われたら吐く。
 イカと同じだ。
 イカ墨とタコ墨は違うのか、同じなのか?
 違うとしたらどう違うのか?
 墨汁みたいだけど、墨汁とどう違うのか。
 墨汁は人間が作る。
 墨汁は原油などを燃やしたときに出るススが原料。
 イカ墨はなにが原料なんだ?
 そもそもイカやタコはなぜ墨を吐く?

 もちろん敵から逃げるためらしい。
 しかしイカとタコの墨の役割は違うらしい。
 タコの墨は拡散する。
 イカの墨は固まる。
 タコは敵の視界をふさいで、そのスキに逃げる。
 イカは墨で自分の分身を作って、敵にそっちを与えてから逃げる。
 イカの分身は食べるとうまい。
 イカの分身だから。
 だから、イカ墨はうまい。
 イカ墨はタコ墨の三十倍うまいらしい。
 つまりアミノ酸の分量がね。

 イカやタコの墨の成分は、セピオメラニンというメラニンの一種だ。
 イカ墨はセピオメラニンにマグネシウムやカリウムがくっついた塩類化合物になっていて、
 粘り気がある。
 ブッと排出されると、固まって、イカの形みたいになる。
 敵はそれに注意を奪われて、イカを捕りにがしてしまうというわけ。
 タコ墨は同じセピオメラニンでも、
 チロシンというアミノ酸が酸化酵素によってできたもので、
 敵を麻痺させる特殊な成分が含まれている。
 これで煙幕を張って逃げるというわけ。

 イカ墨の主成分は、
 ムコ多糖類とか、アミノ酸の一種のタウリンでできている。
 ムコってなんだ? ヨメ多糖類もあるのか?
 ムコとは動物の体内で遊離複合体または蛋白複合体の形で存在する多糖類の総称。
 なんのこっちゃ。
 鼻汁とか痰もおなじものらしい。
 ペッ。

 ついでにネットで調べたら、
 イカ墨パウダーというものが売られていた。
 さっそく注文してみた。
 着払い。
 まだ届かない。
 届いたらなにを作ろうか。
 まずはやっぱりイカ墨スパゲティ。
 それからイカ墨リゾット。
 イカ墨カレーも作ってみたい。
 イカ墨おでんなんてどうだろう。
 イカ墨トンカツ、イカ墨味噌汁、イカ墨マヨネーズ。
 いろいろ作れそう。

 イカ墨ってなんてえらいんだ。
 イカ墨のことをかんがえるだけでこんなに楽しくなるなんて。
 そうだ、イカ墨小説を書いてみよう。
 イカ墨の歌も作ろうか。
 イカ墨の帽子やイカ墨のセーターも作ってみよう。
 イカ墨のコンドームとかイカ墨のティッシュペーパーも作ってみよう。
 イカ墨カーで外出しよう。
 イカ墨パソコンで仕事しよう。
 イカ墨ベッドで寝よう。
 イカ墨ってなんてえらいんだ。